ダメな吹き替えを語るより、良い吹き替えを教えて欲しい

メン・イン・ブラック最新作にて、アイドルが吹き替えを行うことが契機になったのか、「声優としては」素人の人たちが吹き替えを行うことが批判の対象となっている。
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最近だと「シャザム!」とかが顕著だが、吹き替えを安直な宣伝の道具としている感も批判の対象となっているようだ。
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こうした吹き替えキャスト関連は、度々炎上しているわけだが、どこか不毛でもある。
と、いうのも、下手くそな吹き替えを批判するような映画ファンは、そもそも吹き替え自体を観ないのだ。彼らの大抵は字幕派であり、場合によっては吹き替えそのものを「原典に手を加えた紛い物」として見ているフシがある。

で、あるならば、配給元としては、口は煩いが吹き替えそのものに興味が無い層は放っておいて、演技とかよくわからないし気にしないが、話題性には敏感な層にアピールできるキャスティングになるんじゃないかなあ、と思ってしまう。

こうして、吹き替えは地雷と化し、映画ファンはますます字幕しか観なくなり、アニメ映画とかも含めて質の悪いキャストがはびこるようになってしまう。
いやもう、吹き替えを観る場合、いちいち声優のキャストをチェックしないといけないというのはめんどくさ過ぎるんですが。

ただ、良い吹き替えというのは、良い字幕を凌駕するものでもある。
吹き替えの方が多くの情報を伝えることができるため、もとのセリフに近いニュアンスを伝えることができるし、場合によっては、声優によって、より適切な演技が加わることがあるからだ。
例えば、戸田奈津子による字幕が批判された「ロード・オブ・ザ・リング」第一作については、より正確で、情報量が増えた吹き替え版が評価された。
自分自身、吹き替えっていいかも、と思う契機になった一作だ。

最近では、「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」の吹き替えが印象に残っている。前作でもそうなのだが、ベテラン声優陣の演技がものすごく良い。
レイアを演じた高島雅羅は、キャリー・フィッシャーのダミ声を一切無視して、お姫様声で演じていたが、これは、完全に正解だろうと思わずにはいられない。
また、ルークを演じた島田敏は、レイと出会った当初はいかにもな爺さん声なのだが、物語が進むにつれ、徐々に声が若々しくなっていく。そして、ある出来事を契機として、完全に以前のルークと変わらない声となり、最後の決戦に挑むこととなる。

これは、過去の事件により、すっかり世界に絶望しきっていたルークが、レイと出会うことにより、徐々に希望と、かつての自分を取り戻していく様子を表現しているのだと思う。
こうしたことができるのは、声色によって年齢を自由に変えることができる日本の声優ならではの技術であると言えるだろう。

スター・ウォーズ/最後のジェダイ」吹き替え版は、ルークのギャグがうまく活かせていない箇所が一点あったのが気に入らないのだが、それ以外は、字幕より遥かにできがよく、強くお勧めできる一作となっている。

こうした、出来の良い吹き替えが積極的に評価され、観客がたくさん観に行くようになれば、状況はだいぶ改善されるんじゃないかなと思うのだけれど。