アンノ・ヒカワの、昭和TVマンガ主題歌史集

運良くチケットをゲットできたので、行ってみた。

庵野秀明曰く、「OPを時系列に沿ってまとめることで、アニメ史みたいな視点で語れないか」というのがイベントの発端であったようだ。だが、しかし、大半の観客(と、おそらくは庵野とともに登壇した氷川竜介)が期待していたのは、恐らく全然別のことであったろう。つまり「リアルなアオイホノオ 第三話を観たい!」ということだ。

アオイホノオ」 の第三話では、課題提出に行き詰まった主人公が、店先でかかっている東映動画のOP集を観に行くエピソードがある。そこで、庵野をはじめとした将来ガイナックスを作ることになる人たちがぞろぞろやってきて、あれやこれや喋ることになる。「この重量感」「本編では見られない光子力ビーム」とかなんとか。
当該シーンではマジンガーZのみ語っていたわけだが、その他のOPについても薀蓄を聞いてみたい! グレートマジンガーもいいんだろ、どういうところがいいんだ? できれば本人の口から直接聴きたい! と、思った人は沢山いたはずだ。

で、実際にこのイベントはどんなもんだったのかというと、まさしくこのアニメOP語りをやろうとした内容だった。

内容的には大きく二部に分かれていて、まず40本近くのアニメOP(1つだけEDあり)を1時間にわたって上映するのが第一部、次に庵野秀明氷川竜介が登壇し、先の映像を今度は音を抜いた状態で上映し、あれやこれや語り合うのが第二部という構成になっていいた。
で、第二部は、本当にアオイホノオの例のシーンみたいな感じで、それぞれがぽんぽんと原画マンの名前を出したり、「このカットがいいんだよ!」みたいなことを庵野が力説していて、大変面白かった。マジンガーZについては、概ねドラマ通りの感想であったのだが、庵野本人的には光子力ビームは円形ではなくて、本編の描写の方が好きなんだそうだ。最後のゆらしについては、大変興奮して語っていたわけだが、観客の大半はは脳裏に「アオイホノオ」の1シーンが浮かんでいたはずだ。

上映されたOPは「鉄人28号」から「超獣機神ダンクーガ」まで。「主として作画がよいのを選んだ」とのこと。印象的だったのは、「ジャングル大帝」と「赤毛のアン」あたりであろうか。それぞれ、大画面に映えるすばらしいクオリティ。前者については、こんな沢山のフラミンゴ等を描いたりするのは今となっては不可能ではないか(「CG様に頼ることになるでしょうね」)とのこと。「赤毛のアン」については、自分もリアルタイムで観ていたはずなのだが、こんなすごかったっけと呆然としてしまった。
その他、全体的にはディズニーの呪縛から日本独自のアニメへと進化していく流れであること、トレスマシン導入によるOPの変化、スタジオによる作風の違いなどなどがテンポよく語られていった。OPを見ながらのトークなので、必然的に一作品について言及される時間が限られるわけだが、結果的に、進行がグダグダならず良かったのではないだろうか。
なお、当初はもっと新しい時代のOPも候補にあったようで(「カウボーイ・ビバップ」なんかも挙げられていたとのこと)、できれば続編もやって欲しいんだけどなあ。

最後に語っていたのは、「昔は良かったと言うつもりはないが」と前置きしたうえで、「以前は、アニメとは関係ない畑のひとたちが(なかば仕方なく)集まってきて、それゆえに多様性が産まれてきた。でも、僕らの代では特撮やアニメしか知らない人ばかりで、さらに今だとアニメしか知らない人たちばかりになり、純粋培養で同じような作品ばかりになっている」という危機感があるという。
ということで、「日本アニメ(ーター)見本市」になるわけだが、こちらは二作くらいしか観ていないので、また別途。

(2014/11/8 新宿バルト9