紀伊國屋書店 ダサピンク問題雑感

紀伊國屋書店 渋谷店にて、「本当は女子にこんな文庫を読んで欲しいのだ」フェアなるものが行われ、盛大に叩かれていた。

「文庫女子」フェアが色々ひどすぎた - 田舎で底辺暮らし

文庫担当の男性店員が、「女子の意見を一切聞かずに」女性に読んで欲しい本をセレクトし、ポップを添えて店頭に並べるという企画だったらしい。
しかも、このポップが「SFに理解のある女性は100%モテる」とか「オシャレ女子なら北欧ミステリでしょ。」といった恥ずかしいもので、そりゃ、抗議が来てフェアが撤去されてしまうよな、という感じがする。

また、もう一点気になったのが、文庫本のセレクトが無難すぎることだ。

「SFに理解のある女性は100%モテる」というポップが置かれた本は、「ゲイルズバーグの春を愛す (ハヤカワ文庫 FT 26)」なのだが、これはノスタルジーが大量にまぶされた時間旅行にまつわる短篇集で、女性受けが良いSFである*1(レーベル的にもジャンル的にもファンタシーだと思うが)。また、北欧ミステリとして挙げられているのは「雪の女 (創元推理文庫)」で、これは、女性限定のセラピーセンターで起きた殺人事件の物語である。主人公も女性警官だし、明らかに女性に向けて作られた小説になっている。

つまり、女性が普通にハマるであろうド本命の小説をわざわざ男だけで集まって選んで、馬鹿なポップを付けるってどういうことよ、と思うわけだ。このセレクトなら女性を交えても出てくるはずだし、どちらかと言うと女性店員にポップを依頼したほうがより良いものが出来たのではなかろうか。

まさに、女性向け商品のデザインを男が安直に決めて反感を買ったダサピンク的な企画であったと言える。

で、どうせ男子限定で選ぶのなら、もっと女性受けが悪い小説にすべきだったのではないかと思う。どちらにせよ文句が来たとは思うのだが、せめて「女性にもこういう本を読んで欲しかったんです」という言い訳はたったのではないかと。
例えば、SFだったら……うーん、これは偏見と言われるかもしれないけれど、まあ、ごりごりのハードSFとかですかね。イーガンの「万物理論」あたりとか。ただ、これも地雷を踏みそうな気がするなあ。

ということで、ここでは逆に自虐に走ってみてはどうだろうか。多分、ティプトリーあたりを持ってくれば、許してくれるような気がする。この文脈なら、「愛はさだめ、さだめは死 (ハヤカワ文庫SF)」が最適だろう。
ポップはちょっといじって「SFに理解のある女性は100%モテる。特に『男たちの知らない女』を読めば完璧」とか。

*1:実際女子大生でハマった人を知っている